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サンガンピュールの物語(女科学者)4話

 サンガンピュールの物語(謎の女科学者編)

 -4-

 翌日、市長は市議会議員らと連絡を取り合った。このときにサンガンピュールからの報告が発表された。それに基づいて1週間後にくるかもしれないウィルス散布に備えての、長い協議が行われた。そのまた次の日、市長は県知事、警察本部長、および近隣の市長、県知事との合同記者会見で、声明を発表した。

 「今日から1週間か10日の間に、都心などで毒ガステロが起こる可能性がある。特に常磐線を利用して通勤している方々や、都心で働いている方々は警戒してほしい。そして関東全域にお住まいの皆さんは、来週の外出を控えてほしい」

 この声明に首都圏は騒然となった。Kが勤める東京・渋谷区の出版社でも社長からの指令が来た。
 「明日からはテロに対する安全宣言が出されるまで、絶対にこの事務所には来ないように。利益よりも従業員、ならびにお客様の安全を優先させたい」
 この指令を耳にしたKは、大変なことになったな・・・とつぶやく他なかった。

 サンガンピュールは市役所に常駐し、自身が行った偵察行動を基にして警察と対策を練っていた。サンガンピュールはしきりに対策会議に参加していた。
 サンガンピュール「本部長さん、どうします?このまま何の行動も取らないと、テロ活動の阻止どころか誘発してしまいますよ!」
 対策本部長「そんなことは分かってる!我々も真剣に考えてるんだ。無駄に挑発すれば・・・」
 対策本部にいる者全員が焦りを感じていた。
 一方、テロに対する警戒宣言が出されたというニュースを聞いた女科学者・久米奈緒美はアジトで高らかに笑い飛ばしていた。
 奈緒美「ふっ、笑わせてくれるわ、男どもが!私のやり方はそうじゃないのよ!今に見ておきなさい、私たちが開発した、男滅亡のためのウィルスの威力を!」
 久米奈緒美とその仲間たちは警察をバカにするそぶりを見せ、テロ実行への準備を進めていった。


 数日後、詳しい経緯は省くとして警察の封じ込め策がまとまった。Kなどの証言により、アジトと断定した建物にサンガンピュールと特殊部隊を派遣させる。そして久米などテロリスト一味を一網打尽にし、男を滅亡させるための殺人ウィルスを慎重に回収する。といった具合であった。
 そして作戦決行の日。特殊部隊がサンガンピュールと共にアジトに向かった。Kは元々、一般人であるため留守番だ。しばらくして彼らは土浦の中心街の路地裏にあるアジトに到着した。特殊部隊の隊長が言った。
 「みんな、準備はいいか?ではサンガンピュールさん、頼みますよ」
 「はい!」

 サンガンピュールは前回と同じ髪型であり、そしてメガネをかけていた。そして久米のアジトをノックした。特殊部隊は隠れている。
 「はい、どなた?」
 「先日、あなたにお伺いに来たものですが」
 ドアが開く。久米が出てきた。
 「あら、この前のあなたじゃないの」
 「どうも、こんばんは・・・」
 サンガンピュールが返事する。久米が答えた。
 「どうしたの?」
 「そうなの、では上がりなさい」
 そしてサンガンピュールが合図を出した。

 「突撃!」

 隠れていた特殊部隊がアジトに押し寄せた。久米は驚きを隠せなかった。他の構成員たちもひるんでいた。
 奈緒美「何よ、これ!あなたたちは一体!私が何をしたというの!?」
 サンガンピュール「あたしが誰だか、まだ気づかないの?では正体を見せるよ!」
 奈緒美「あなたって・・・」

 久米奈緒美は絶句した。サンガンピュールは髪を留めていたゴムを外し、ストレートヘアに戻した。そしてメガネも外し、素顔のサンガンピュールに戻った。

 「サンガンピュール・・・だったのね・・・、まんまとだまされたわ!」
 久米がこう叫んだ後、特殊部隊の一人が言った。
 「証拠はいっぱいあるんだ!水戸地裁の逮捕令状もあるぞ!」

 その直後、久米は首にぶら下げていた笛を吹いた。逆に特殊部隊はひるんだ。その瞬間、久米をはじめとする構成員全員はあろうことかアジトからの脱走を図ったのだ。これはサンガンピュールと特殊部隊にとっては予想外の行動だった。実は久米は、いつ警察に逮捕されてもいいようにと、予め逃走マニュアルを用意していたのだ。
 恐ろしいほどの早足だった。久米とその仲間はアジトを飛び出し、遠く離れた車庫に向かった。特殊部隊は大きな武器を担いでいるせいか、追いつくことができない。サンガンピュールはテロリストの仲間の中に少女を一人見かけた。一体どういうことだろう。どうしても少女だけを捕まえて問いただしたいと思ったサンガンピュールだったが、逃走のスピードに追いつくことはできなかった。そして少女を含めた構成員は車庫に置いてあった車で逃げていった。行き先は不明だ。

 (第5話に続く)


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